「的貼ってくださーい。的貼ってくださーい。
.....ああ、今日も誰も貼ってくれなかった....寒いわ。」
少女はぶるっと震えると、手に持った的紙を見つめました。
「そうだ、的紙を燃やせば暖かくなるかも知れない。」
そう言って、いつもはシュパシュパするためのライターを取り出して、 的紙に火をつけました。ぼわっと音を立てて燃え上がった炎を見て、 少女はあっと声を立てました。炎の奥に、 おいしそうなカップラーメンが湯気を立てていたのです。
「あたしの好きなラ王だ！」
ラーメンに手を出したところで、炎は消えて、 少女の手には的紙の燃えかすだけが残りました。
少女が、もう一枚の的紙に火を着けると、こんどはコンビニ弁当が、 そして次の一枚ではケンタッキーフライドチキンが、 現れては消えて行きました。少女は、狂ったように、 残りの的紙全部に火を着けました。するとどうでしょう、 目の前に少女の母親が現れたのです。
「お母さん！」
と叫んで、胸に飛び込もうとする少女を母親は一喝しました。
「たまには自分で料理しなさい！」
翌朝、全焼したＱ道場の跡から、何やらいい匂いがします。 こんがりとした豚の丸焼き.....
― Q道場ではそこそこ受けたんだけどな、 ここに書いても寒いだけのような ―